冬は必ず春となる ― 悪世末法を生きる⑰
🌸なぜ謗法厳戒なのか ― 神天上と悪鬼魔神について
日蓮正宗では、「謗法厳戒」ということを大切にします。
謗法とは、仏様の正しい教えに背き、正法を誹謗したり、正法以外の教えを信仰の対象として拝んだりすることです。
そのため、日蓮正宗の信徒は神社を信仰の対象として参拝せず、神札やお守りを祀りません。
初めてこの話を聞く方の中には、
「どうして、そこまで厳しく考えるのだろう」
「神社へ行くことの何がいけないのだろう」
「神様を否定しているのだろうか」
と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
しかし、日蓮正宗の謗法厳戒は、神様を憎んだり、他宗の人を嫌ったりするための教えではありません。
私たちの生命と成仏に関わる信仰の根本を混乱させず、御本尊様への純粋な信心を守るためのものなのです。
🌸謗法とは何か
「謗法」は、正法を謗ると書きます。
日蓮大聖人様は『新池御書』において、法華経を読み、褒めているように見えても、その心に背けば謗法になることを御教示されています。
謗法とは、単に仏法を知らないことだけではありません。
正法を軽んじること。
正法と誤った教えを同じように扱うこと。
御本尊様を信じながら、別の信仰対象にも救いを求めること。
人にも正法を信じさせないよう妨げること。
こうした行為も、信仰の根本を曖昧にする謗法につながります。
日蓮正宗が謗法厳戒を大切にするのは、形式だけの厳しい決まりを守らせるためではありません。
どの教えを生命の根本とするかによって、その人の考え方、行動、そして人生の方向が変わっていくと考えるからです。
🌸諸天善神は、正法を守護する働き
日蓮正宗では、神の存在そのものを、すべて否定しているわけではありません。
御本尊様にも、天照太神、八幡大菩薩、大梵天王、帝釈天王など、諸天善神の名が認められています。
諸天善神とは、独立した本尊として人間を救う存在ではなく、正法と正法を信じる人を守護する働きとされています。
つまり、諸天善神そのものを信仰の根本として拝むのではありません。
御本尊様を根本として勤行・唱題に励むところに、諸天善神の守護が現れると教えられているのです。
日蓮正宗寺院の解説でも、信徒は諸天善神を直接拝むのではなく、御本尊様へ勤行・唱題することによって、その守護を受けると説明されています。
🌸「神天上」とは何か
日蓮大聖人様は『立正安国論』に、次のように仰せです。
「世皆正に背き人悉く悪に帰す。故に善神は国を捨てて相去り、聖人は所を辞して還りたまわず。是れを以て魔来たり鬼来たり、災起こり難起こる」
人々が正法に背き、誤った教えを信仰の根本にすれば、正法の法味を受けることのできない諸天善神は国土を去り、その後に魔や鬼が入り込んで、災いや苦難が起こる――という御教示です。
これを「神天上の法門」といいます。
「神天上」とは、正法を守護する諸天善神が、その場所を捨てて天上へ去るという意味です。
日蓮正宗の教義では、諸天善神が去った神社や国土には、代わって悪鬼・魔神が入り込み、人の生命や社会に悪い影響を及ぼすと説かれます。
そのため、日蓮正宗では、御本尊様への信仰を守るため、神社を信仰の対象として参拝することを謗法として戒めています。
🌸悪鬼魔神とは、どのような働きなのか
「悪鬼魔神」と聞くと、恐ろしい姿をした何者かが、目に見える形で現れるように思うかもしれません。
しかし仏法に照らせば、人の心を迷わせ、正しい判断を失わせ、善い行いを妨げる働きとして捉えることもできます。
怒りに支配され、相手を傷つけてしまう。
欲望に振り回され、大切なものを見失う。
慢心によって、人の忠告を聞けなくなる。
嫉妬や恨みから、他人の幸福を願えなくなる。
自分の過ちを認めず、悪い行いを正当化する。
仏法や信仰を嘲笑し、正法から人を遠ざけようとする。
このように、人間の迷いや煩悩に付け入り、さらに悪い方向へ向かわせる働きを、悪鬼魔神の働きとして考えることができます。
法華経の勧持品には、
「悪鬼其の身に入って」
と説かれています。
日蓮大聖人様も『教行証御書』において、「悪鬼入其身」の文を引かれ、無明に迷い、正法に背く姿を厳しく戒められています。
ただし、この御文を使って、精神的な病気を抱えている人や、不可解な行動をする人を、
「あの人には悪鬼が入っている」
などと決めつけてはならないと思います。
心身の不調には医療的、心理的、生活上の原因もあります。必要な場合には医師や専門家の助けを受けることが大切です。
また、悪い行為をすべて悪鬼魔神のせいにして、本人の責任をなくすこともできません。
仏法を学ぶ私たちは、まず自分自身の生命にある貪り、怒り、愚かさを見つめ、唱題によって乗り越えていくことが必要なのだと思います。
🌸神社を拝むとなぜ信仰が混乱するのか
「御本尊様も信じるけれど、神社でもお願いすれば、さらに御利益があるのではないか」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、異なる教えや本尊を同時に信仰の根本とすれば、
「本当に自分を救うものは何なのか」
という根本が曖昧になります。
困ったときには御本尊様。
別の願い事には神社。
さらに別の悩みには占いやお守り。
このように救いを求める対象が増えていけば、かえって心は迷い、不安から離れられなくなることがあります。
日蓮正宗の謗法厳戒は、私たちを狭い世界に閉じ込めるためではありません。
御本尊様を唯一の信仰の根本と定め、迷いや不安に振り回されない生命を築くための戒めなのです。
🌸神社の前を通っただけで罰が当たるのか
ここで、誤解しないようにしたいことがあります。
仕事、旅行、地域生活などの事情で神社の近くを通ったり、境内が通路になっていたりすることもあるでしょう。
大切なのは、偶然その場所を通ったことだけを恐れるのではなく、信仰の対象として手を合わせ、賽銭を供え、願いを託す行為を慎むことです。
家庭や職場、学校、地域の行事などで対応に迷う場合には、自分だけで極端に判断せず、所属寺院の御住職様へ具体的な事情を説明し、指導を受けるのが安心です。
また、神社を信仰する人に対して、侮辱的な言葉を向けたり、人格まで否定したりする必要はありません。
相手の幸福を願い、礼節を保ちながら、自分は御本尊様への信仰を貫く。
折伏とは、相手を言い負かすことではなく、その人が正法によって幸福になれるよう、慈悲をもって伝えることだからです。
🌸不幸を何でも「罰」と決めつけない
神社を参拝した人に病気や事故が起きたとしても、私たちが、
「神社へ行ったから罰が当たった」
と断定することは慎むべきだと思います。
反対に、参拝しても何も起きなかったから、謗法ではないと判断することもできません。
前回、一闡提人について学んだように、目の前の現象だけを見て、その人の過去・現在・未来の因果を、私たち凡夫がすべて判断することはできないからです。
謗法厳戒は、人の不幸を探して裁くための教えではありません。
まず自分自身が、正法に背く縁を慎み、御本尊様への信心を守るための戒めです。
他人を裁く前に、自分の信心が形式だけになっていないかを省みることが大切なのだと思います。
🌸正法を守ることは、自分の生命を守ること
現代社会には、さまざまな情報や思想があふれています。
不安な気持ちにつけ込み、高価な物を買わせたり、恐怖によって人を支配したりするものもあります。
運勢、占い、お守り、霊的な力などに次々と頼れば、一時的に安心できても、さらに悪い結果を恐れ、心が縛られてしまうことがあります。
そのような中で、何を生命の根本にするのかを定めることは、とても大切です。
御本尊様にすべてを御報告し、南無妙法蓮華経と唱える。
御書を学び、感情だけでなく仏法の道理に照らして考える。
不安に振り回されず、必要な現実の行動を起こす。
苦しんでいる人の幸福を祈り、慈悲の心で正法を伝える。
これが、悪鬼魔神の働きに心を弄ばれず、正しい人生を歩むための道なのだと思います。
🌸謗法厳戒の奥にある慈悲
「謗法厳戒」という言葉は、とても厳しく聞こえます。
しかし、その奥にあるのは、
「一人も不幸になってほしくない」
「迷いによって成仏の道を失ってほしくない」
という、日蓮大聖人様の深い慈悲ではないでしょうか。
日興上人様も、身延の地頭であった波木井実長が謗法を改めなかったため、大聖人様の正法を守るために身延を離れられました。日蓮正宗の歴史において、謗法を厳しく戒めることは、信仰の根本を守る重大な意味を持っています。
私たちも、他人を責めるためではなく、自分と大切な人の幸福を守るために、謗法を慎む必要があります。
そして、御本尊様への信心を根本として勤行・唱題に励み、諸天善神の守護をいただける生き方を目指したいと思います。
信仰の根を一本に定めれば、不安のたびに別の何かへ頼る必要はありません。
どのような苦難に遭っても御本尊様から離れず、智慧と勇気をもって現実に向き合う。
それが、日蓮正宗における謗法厳戒の、本当の意味なのだと思います。
南無妙法蓮華経
今日の問いかけ
不安や迷いが生じたとき、御本尊様への信心を根本とせず、別の何かに救いを求めようとしていないでしょうか。
謗法厳戒を他人へ向ける言葉ではなく、まず自分自身の信心を守るための戒めとして、もう一度考えてみませんか。

🌸注意事項
こちらのブログは、日蓮正宗の公式見解ではなく、信徒である私個人の体験や考えをもとに執筆しております。
そのため、日蓮正宗を代表する見解ではございません。あらかじめご了承ください。
少しでもご興味をお持ちになりましたら、お近くの日蓮正宗の寺院へご連絡いただき、ご住職様にお話を伺っていただければ幸いです。
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